AGF2023出展記念にビーズログ・アニメイトタイムズにて公開した書き下ろしSSを公式HPにて掲載！

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Reboost　    https://sprout-pj.jp/tcs/special/special-1984/
BUMPEACE     https://sprout-pj.jp/tcs/special/special-1985/
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「本日も犬猿 -AGF2023ver.-」

カラーレーション本部によって実施が決定した宣伝施策のイベント。
海吏と神楽は、当日着用する衣装の合わせにやってきていた。
衣装部屋に到着するなり、海吏はソファにごろんと横になった。
「あ〜。衣装あわせとかマジだりぃにゃぁ」
「まったくだ。しかもなぜ貴様と揃って来なければいけないんだ？」
「さあな。嫌がらせじゃね」
「あの教師共……」
「ま、パパっと終わらせちまおうぜ。海吏きゅんゲームの続きしてえ」
「おい、そのゲームとやら……。貴様、昨夜もやっていただろ」
「そだけど？」
「深夜まで俺の部屋に音が聞こえてきていた。他人と共同生活をしているんだ。少しは遠慮しろ」
「無理〜。海吏きゅんは好きなことだけやって生きるのがポリシーなんでぇ」
「クソみたいなポリシーだな」
「クソツマにクソって言われたくねぇよ、バーカ！」
「俺にバカと言うな。前々から言おうと思っていたが、俺は勉学に関していえば類を見ない秀才で」
「あーもーうるせうるせ」
　海吏が面倒そうにあしらうと、神楽は悔しそうに睨みつけた。
「さーてと。俺の衣装どれだっけにゃー」
　ラックにかかっている自分の衣装を手に取ると、海吏は鏡の前に立って、自分の身体に合わせてみせる。
「ん。いいじゃん」
「相変わらず、貴様に用意されるのは派手な服だな」
「俺しか着こなせねえってことじゃね」
「フン。おかしなおまえにぴったりだ」
「そっちこそクソツマにお似合いの衣装でよかったじゃぁん」
「……それはどういう意味だ？」
「そのまんまの意味でちゅよ？　自分でよーく考えてみてくだちゃい」
　ケラケラとふざけた笑い声をはなつ海吏に、神楽は舌打ちをした。
「いちいち腹の立つ男だな」
「そっくりそのまま返しまーちゅ」
「フン」
　海吏は次々に服を脱いで、あっという間に下着姿になっていく。
　神楽にとっては特別なことではない。海吏は普段から裸で室内をうろうろしているため、見慣れた光景だった。
　しかし、一方の神楽が海吏の前で素肌を晒すことはほぼないに等しかった。
　神楽は衣装を手にしながら、ためらった。
（この状況、非常にやりづらい……）
　固まっている神楽に海吏が不審な目を向ける。
「なにおまえ、着替えねえの？」
「……」
「無視かよ」
「……いや、その」
「あ？」
　もじもじと狼狽える神楽を見て、海吏は苦虫を潰したような表情をする。
「んだよ、うぜえな〜。おまえまさかあれか？　恥ずかしいとか鳥肌モンの発言するわけじゃねえよな。さすがにクソツマでもそれはキモすぎ……」
　神楽の顔には、図星だと書いてある。まさかの反応に海吏は唖然としたまま、フリーズしてしまう。
「え……マジ？」
「俺は人前で素肌を晒したくないんだ。倉橋、二分で構わない。後ろを向いていてくれ」
「いやてめえの裸見たってなんも思わねえぞ」
「貴様の都合を考えているのではない。俺は子供のときから、他者に裸を見られたくない人間なんだ！」
「なんだそりゃ。今までどうしてきたんだよ。体育ン時とか、更衣室で着替えてたんだろ」
「それは素肌をさらさない着替え方というのがあってだな……」
「はあ〜〜？　ならここでもそれやればぁ〜？」
「俺が今着ている服だと難しいんだ。できない！」
「面倒くせえな〜。んじゃ諦めてそのまま着替えろ」
「絶対に嫌だ！　おまえにだけは見られたくない！」
「ざけんなよ」
「こちらのセリフだ。少し後ろをむいているだけでいいと言っているだろ！」
「おまえに指図されてやるっつーのが嫌だっちゃ」
「減らず口ばかり叩きやがって……！」
「ひひっ。ごめんにゃぁ〜。産まれたときからこういう性格なんだわぁ」
「この外道め！」
「ま、つーことでクソツマさん。さっさとお着替えどうぞーっ」
「く……っ」
「あれ、できねぇの？　普段あんだけ高飛車気取ってるくせに？　できないんすかぁ、クソツマさぁん」
「く、くうぅ……っ」
「おまえ、案外大したことねぇな。クソツマはビビりの小心者〜っ！　よ、世界一つまらない男っ！」
「あああああやめろ！　それ以上俺を侮辱するな！！」
「ならさっさと着替えちまえって〜。どうせできねえんだろ〜？」
「そんなことはない！」
「無理すんなってぇ！」
「いいか倉橋。俺が脱いだら先ほどの発言を撤回しろよ」
「先ほどの発言？」
「俺がビビりで小心者だという発言だ！！」
「あーへいへいあれね。わかりました撤回しますぅ」
「本当だな！」
　神楽は覚悟を決めたようにため息をついて、とうとう服を脱ぎはじめた。
「ったく、最初からそうしとけよな。てめえのヒョロガリ体型見たってなんとも……」
　すると思いの外、バランスよく鍛えられているその身体に海吏は思わず拍子抜けしてしまった。
「……」
「なんだ。ジロジロ見るな」
「え、なに。おまえもしかして鍛えてんの？」
「？　ランニングと筋トレは、日々欠かさずに続けてはいる」
「……へえ、あっそ……ふーん」
　自分よりも鍛えらえた神楽のプロポーションを目の当たりにし面白くなかったのか、海吏は視線を逸らした。その表情は悔しさのニュアンスも滲みとれる。
「おい、なんだその態度は。ここまでしたんだぞ。さっきの約束を守れ。発言を」
「海吏きゅんつまんねーからちょっとお散歩してくるぅ」
「はあ？　なにを言って、倉橋、おい！！」
　神楽を尻目に、海吏は部屋を出た。その瞬間、様子を見にやってきた田所とばったり出くわす。
「倉橋」
「おー。やっほ、タドコロン」
「なんだおまえ。どこに行く」
「ちょっと武器を備えに」
「は？　衣装のまま外に出るな」
「んなこと言ってらんねえんだってぇ！」
　田所の言うことを聞かず、海吏は廊下を歩き、出口へと向かっていく。
「おい、倉橋待て！　行くにしても理由を言え。じゃねえと認めねえぞ」
　田所が強く呼び止めると海吏は悔しそうに振り返った。
「あいつにだけは負けたくねえんだよ！」
「あ？」
「男なら、戦わねえといけねえべ！」
　そう言うと、海吏はなにかに突き動かされるように、走り去ってしまった。
「……最近のガキってマジで意味わかんねえな」
　田所がそんな状態の海吏を目にしたのは、後にも先にもこれが最後だった。
　――そして衣装部屋に入ってきた田所から一連の流れを聞かされた神楽は、音もなく床に崩れ落ち、腹を抱えて笑うしかなかった。
　
END